大判例

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大阪高等裁判所 昭和28年(う)1013号 判決

公職選挙法第一三九条は選挙運動に関し、いかなる名義をもつてするを問わず、湯茶以外の飲食物を提供することを禁止しているけれども、同条の趣旨が選挙運動に従事する者に対する弁当料の実費弁償をも禁止するものでないことは同法第一九七条の二の規定によつて明らかである。しかして弁当料の実費弁償とは同条によつて選挙管理委員会が定める額以下を金銭をもつて支出することをいうのであつて、金銭以外のもの特に現物支給は右第一三九条の禁止規定に触れるものと解すべきである。所論昭和二八年三月一九日中央選挙管理委員会告示第二号は前記公職選挙法第一九七条の二の規定に基き、参議院全国選出議員の選挙につき選挙運動従事者及び労務者に対する実費弁償及び報酬額を定めたものに過ぎず、その内容を検討するも、所論のように公職選挙法第一三九条の規定内容を変更したものでないことは疑問の余地なきのみならず、法理論よりするも、選挙管理委員会の告示をもつて法律たる公職選挙法の規定を改廃することのできないことは勿論であり、所論は採るに足りない謬論といわなければならない。

同第三点について。

しかし前段説示の如く公職選挙法は飲食物の価額即ち弁当料等の実費弁償を是認しているのであるから、同法第一三九条が飲食物の現物提供を禁止しても、所論のように候補者及び選挙運動者の選挙運動を不当に制限することとはならないのであり、従つて飲食物の現物提供をなした被告人を同法条に触れるものと判断した原判決は憲法第一五条に違反するものではない。

同第四点について。

公職選挙法第一三九条は飲食物の提供を受ける者が何人たるかを限定していないから、いやしくも選挙運動に関し提供せられたものと認められる以上は、相手方が選挙運動者たると否とを問わないものと解すべく、従つて原判決が選挙運動者を単なる選挙人と誤認したとしても、判決に影響を及ぼさないことが明らかであるから、本論旨も理由がない。

検事の控訴趣意第一点について。

先ず原判決は公訴事実第一の(1)につき被告人が昭和二七年九月六日猪阪藤太郎外八名に対し一人前二二〇円相当の酒食を饗応したのは、町総代として相談役たる右猪阪藤太郎等を招集し石垣猪吉の村有廃道使用願の件につき協議した際町総代たる職務権限の範囲内の行為であつて、本件教育委員選挙に関係なきものと判示しているが、検事援用の証拠によると、所論の如く右原判決の事実認定に誤があることを疑うに足り、この誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであるといわなければならない。

次に原判決は証人猪阪藤太郎の原審公判廷における供述によつて、前記九月六日当時被告人は未だ立候補の決意をしていなかつたものと認定しているが、この点につき記録を調査するに、原審検事は当初第二回公判において猪阪藤太郎の検察官に対する供述調書三通の取調を請求したが、第三回公判において弁護人が刑事訴訟法第三二六条の同意をしなかつたので、検事は一応これを撤回した上、右猪阪藤太郎を証人として尋問せられたい旨請求し、第四回公判においてその証拠調が実施せられたところ、原判決摘示のような供述があつたため、検事は右供述がさきに検察官の面前でなした供述と相異するので同法第三二一条第一項第二号により証拠とせられたいと主張して前記供述調書を提出し、更に第一〇回公判において証人松野良秀等の尋問を請求したるに拘らず原審は右書面及び証人取調請求をいずれも却下していることが認められる。しかし右証人猪阪藤太郎の公判期日における供述が検察官の面前における供述と相反するときは、同法第三二一条第一項第二号後段により検察官の面前における供述録取書面を証拠とすることを妨げないから、原審としては同号後段所定の特別の状況存在の有無及び同法第三二五条所定の供述の任意性の調査として原審検事請求の証人の取調をなすべきにかかわらずこれが請求を却下し、且つ漫然右検察官の面前における供述録取書面の取調請求をも排斥し去つたのは違法であつて、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点においても原判決は破棄を免れない。

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